五葉松育て方
五葉松は、黒松、真柏と並んで松柏類だけでなく盆栽全体でも代表的な存在です。
荒々しい黒松と比べると、優雅な雰囲気を漂わせ見る者を落ち着かせます。
人で例えると、黒松は武士、五葉松は公家を連想します。
五葉松の増やし方は?
五葉松は実生、接ぎ木で増やすのが一般的だと思います。
瑞祥などの品種では、挿し木(挿し芽)で増やすこともできるそうですが、発根する確率は低いとされています。
他には針金で幹を締め付けて取り木を行う方法もありますが、これも経験が必要なため初心者にはおすすめできません。
実生から育てる。
盆栽鉢で育てている、五葉松に松ぼっくりができることはあるのでしょうか?
自分の経験上、地植えして数十年育てた五葉松でないと、種を採取することは困難なのではないかと思います。
入手方法
五葉松の品種もいくつかあり、産地では盆栽園などで種を手に入れることも可能かもしれません。
また、ネットやフリマアプリで五葉松の種が売り出されていることもあります。
秋に松ぼっくりを採取し、ある程度深さのある容器、箱に入れます。陽の当たる屋外に置いておくと外側が開いて中から種が出てきます。
種の羽根を取った後、赤玉土などに取り蒔きします。
春には新芽が出てきます。
実生のデメリットは、育成に時間がかかることです。反対にメリットは、好きな樹形にすることが可能なことになります。
品種によりますが、もともと高山性の植物のため種から育てるのは困難な地域もあるかとは思います。
暑すぎてもダメ、湿度が高すぎてもダメ、通気性が良い場所でないとダメなど、ワガママな一面があります。
接ぎ木で育てる。
黒松の台木に五葉松を接ぐ方法が一般的ですが、他の松の種類を台木で接ぐこともできるようです。
当方は、黒松を台木にしています。
3~4月頃、五葉松のローソク芽がでてくる時期に行います。
台木の黒松の、上部を切り落とし、ナイフなどで上部に切り込みを入れます。そこに五葉松の芽を継いでいきます。接合部は接ぎ木テープで固定します。天接ぎと呼ばれたりする方法です。
時期的に遅いと、接いでも芽の部分がすぐに枯れてしまい失敗してしまうため、適期に行うことが必要です。
接ぎ木のデメリットとしては、上の写真のように五葉松の部分と黒松の部分の境がはっきり残ることです。気になる人は、時間はかかりますが実生で育てる方が良いでしょう。
接ぎ木のメリットとしては、一度活着さえすれば、黒松の生命力の強さで育てることができます。実際、実生から育てるより早く盆栽としての形を作っていくことが可能です。
剪定・芽摘み
樹形を整えるため、毎年の剪定、芽摘みは欠かせません。
黒松は、荒さが魅力ですが、五葉松は葉の美しさが魅力なので黒松以上に時間をかけて剪定、芽摘みが必要です。
時期は?
剪定の時期は、休眠期の2月頃が良いです。
春以降も伸びてくる枝もあるので、徒長する枝は7月までの間に切っておいた方が良いです。
芽摘みは、みどり摘みとも呼ばれ4月に緑色の新芽がローソク状に伸びてくる時期に行います。
新芽は柔らかいので、手で摘み取ることができます。(松柏類は金気を嫌う性質があり新芽はハサミを使わない方がよさそうです。)
勢いの良い新芽は深く摘み取るようにします。(2/3程度摘みます。)
葉すかし
五葉松の葉は、昨年、一昨年の葉が残っています。
一昨年の葉は、8月以降赤く枯れて自然に抜け落ちます。
しかし、後述の消毒の説明にもあるように、葉が密集すると病害虫の温床になる可能性もあるので、夏に古葉を取った方が良いでしょう。
手で引っ張ると、古葉は取れます。古葉を抜くことで風通しも良くなります。
針金掛け
針金掛けは銅線を使用します。太さは枝の太さに合わせます。
また、強く曲げていく所は、やや太めの針金を使い巻く間隔を狭くします。
全体の樹形を整え、葉が上向きになるように曲げていきます。
樹形が変わるほどに曲げる場合は、音を聞きながら一度に行わずに、数回に分けて徐々に曲げていきます。
時期は?
適期は、剪定後の2月が良いです。夏の成長が終わる9月~10月に針金をかけても良いです。
春から夏の成長期は、針金の食い込みを確認します。枝や幹に食い込むようなら外します。
水遣り・肥料
黒松に比べると、水遣りは少なめが良いとされています。
多量の水遣りでは、葉が伸びすぎて樹形が崩れることがあります。
12月~2月は、2~3日に一度、3~4月は毎日一度、5~9月は毎日朝夕の2回、10月~11月は毎日一度くらいが目安になります。降水量、気温は地域差があるので環境に応じた水遣りが必要です。
肥料も黒松のように多肥でなくても良く、9月~10月に置き肥を行います。
消毒
春先から秋にかけ、アブラムシ、ダニ、葉ふるい病など発生する可能性があります。
3月下旬~11月初旬くらいまで、定期的に消毒を行います。
葉が密集したり、風通しの悪いところに設置すると病害虫が発生しやすくなるため、消毒だけでなく剪定、適切な設置場所の確保が重要です。
植え替え
五葉松の植え替えの適期は3月です。新芽が成長する前に行う方が良いでしょう。
実生、挿し木から5年位は2年に一度は植え替えします。
根の生育は、他の樹種に比べ遅いので、水遣りの際、鉢の底から水が流れないなどの症状が無ければ、それ程頻回に植え替える必要は無いかと思います。
成熟してきた樹なら、4~5年に一度程度で大丈夫です。